記紀万葉には麻にかかわる文章が多数みられますが、それだけ麻が古代人に身近なものであったからでしょう。
布衣風衣で持っている麻の情報のうちで、東北の山村で種蒔きから麻布までの工程を取材したものがありますので、
ごく簡単に紹介しておきます。記紀万葉を読むとき、この工程を知らないと文章が理解できない場合があります。
この地方では麻のことをただ「お」といってます。5月初旬、種を蒔きます。麻といえば麻の葉模様を思い起こさせます。麻が勢いよくまっすぐに伸びるその姿から、赤ん坊に麻の葉模様の産着を着せて、すくすく育つようにと願いました。
8月初めから半ば過ぎまでが収穫期、よく天日干しして収納します。
織りに使うのは、麻の茎の表皮と芯の間の部分ですが、これを取り出すのがなかなかの手間です。9月になると、前月干しておいた麻を水につけ、ふやかし、芯からきれいに皮をはぎ取ります。芯からはがした皮にはまだ表皮が残っているので、これをしごきとると、ようやく糸にする麻ができあがります。
冬になると、糸作りが始まります。麻を裂いて、つないで、ためていきます。糸作りは麻布を作る工程のなかでもっとも根気と時間のいる作業です。つないだら、これに糸車でしっかりとよりをかけてようやく麻糸になります。
たて糸を整経して、糊付けし、おさ通し、たて糸巻き、かけいとかけ、織りとすすみます。昔は織りあげると雪の上に広げ、さらして白くしてから紺屋へ出しました。
染織伝承館 布衣風衣
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